有名デザイナー・佐藤オオキと、「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」を描いた漫画家・松井優征の対談。

 

ひらめき教室 「弱者」のための仕事論 (集英社新書)

 

テレビで放映された内容の書籍化です

NHKのスイッチインタビュー 達人達で放映された内容に加え、放映の後日に改めて設定された対談を加えた書籍化。

この本自体が、松井優征さんが「週刊少年ジャンプ」誌上で「暗殺教室」を連載中の話なので、少し前に発刊されていましたが、テレビ放映でも見逃していたので、文庫化で知ることができて良かったです。

 

サブタイトルは『「弱者」のための仕事論』。

松井優征さんは「暗殺教室」で一躍有名になった漫画家。僕は前作の方が好きなんですけど

漫画に対してはかなり理詰めで作っておられるようで、「殺す予定だったキャラは絶対に殺す」とまで言い切ってます。

(自分の漫画の中のキャラクターは)フラットで、すべて一緒です。好きの感情に流されると、考えていたストーリーが正しく進まない恐れがあるんですよ。他の漫画家さんは殺す予定だったキャラを殺せなくなったという話も聞きますが、自分の場合は、殺す予定があれば、殺します。

 

一方、佐藤オオキさんは超売れているデザイナー。

 

書籍も多数あり、NHKの「プロフェッショナル」でも紹介されています。

 

自分の弱点を一回認めた人は本当に強い

そんな彼らのスタンスは、自分が凡人であると認めること。

最初は「自分が作ったものは必ず面白がられる」という根拠のない自信から始まりますけど、そこから卒業して、「しょせん、自己満足じゃないか?」と思えるかどうかは、クリエイターとして大事ですよね。

 

楽できるところは相応に楽をして、注力するときは注力して、という姿勢が肝心ですよね。そういう意味では、「自分に大した才能がない」が、僕の基本戦略なんです。

 

松井優征さんは自身の弱点も認めており、そのうえで、作品を世に出しています。

ただこの方法の弱点は、最初から天井が決まっていて、それ以上は爆発しないこと。逆に、やりたいことが合って感覚で取り組んでいる漫画家さんは、次の週がどうなるか、自分でもわからずに描いていたりするんですね。そうすると、どんどん加速度的に盛り上がっていって、結果的にとんでもない高さに到達することがある。

 

目的達成までの道のりはいくつも考えられる

面白いなと思ったのが、佐藤オオキさんのクリエイターの考え方。

たとえば「きれいなハートを描いてください」とクライアントに言われたとします。そこでちょっとつぶれたハート、小さいハート、白いハート、黒いハート、のような視点で議論しても、そこにおもしろいアイデアはないような気がして。

その時、たとえば紙の右端に半分のハート、左端に半分のハートを描いて、折って一つのハートを完成させるとか。紙で円筒を作るように、ハートの形に丸めるとか。

「コップに入っている水を空にしてください」というお題でもいいです。逆さにして全部捨てるのが一番ベーシックかつ、安定感のあるやり方。でもその他に、小さな穴を空けて一カ月後、水が全部漏れているとか、下にヒーターを仕込んで全部蒸発させるとか、そういうおもしろい捨て方っていろいろあるはずなんです。空にするという目的は必ず達成しないといけないけれど、そこに至るまでの道のりはいくつも考えられる。

 

心に残った言葉

確かに「やりたいことがある」は、やりつくしてしまって、完結してしまう恐れはありますよね。その点、「やりたいことがない」は、かなり持続性のあるモチベーションになります。

 

なかなかこの言葉は言えませんよね…

「何かをし続けなければいけない」と思い込んでる自分に気づきましたよ。

 

いつの間にか固まってしまっていた価値観を崩してくれる対談でした。

 

 

おまけ

暗殺教室に比べ、僕は前作のネウロ(魔人探偵脳噛ネウロ)のほうが好きだったんです。

暗殺教室は、まあ面白いんだけど、エネルギーと毒々しさはネウロのほうが上だなあ、と思っていたら、それが計算どおりだったらしく、ネウロは好き嫌いが分かれて儲けられなかったので、暗殺教室では万人受けしてメディアミックス展開もしまくって儲けつくすコンテンツにしたかったとのこと。

 

…見事に手のひらの上で転がされていたようで悔しいです。

自分の作品を「商品」として見ることができるからこの人は強いんだろうな。

 

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